書評:メンバーの才能を開花させる技法

メンバーの才能を開花させる技法

メンバーの才能を開花させる技法

  • 作者: リズ・ワイズマン,Liz Wiseman,グレッグ・マキューン,Greg McKeown,(序文)スティーブン・R・コヴィー,Stephen R. Covey,関美和
  • 出版社/メーカー: 海と月社
  • 発売日: 2015/04/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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この本を読み終わったので、まとめます。

今回は、技術系の本ではなく、リーダーシップ・人材マネージメントの本です。

はじめに

リーダーの特殊能力

メンバーから限界以上の力を引き出す能力と定義されています。

ピーター・ドラッガーの主張

  • 20世紀の経営が果たした、もっとも重要で、これまでにない貢献は、製造業の労働力の生産性を50倍に拡大したこと。

  • 21世紀の経営が果たすべきもっとも重要な貢献は、知識労働とその従事者の生産性を上げること。

  • 20世紀の企業にとって、もっとも価値ある資産は、製造装置だった。21世紀の組織にとって、もっとも価値ある資産は、知識労働者とその生産性である

この本を読めば、ドラッガーの主張に応えられるリーダーとはどのような人かを把握できます。

本書の目的

読者の方を増幅型リーダーにすること。そして、あなたの周囲から天才を生み出し、より大きな貢献を引き出すこと。となっています。

1.なぜ、今「増幅型リーダー」なのか

リーダーの2つの類型

リーダーにとって大切なのは、メンバーの知識をどれだけ活用できるかと定義されており、うまく活用できるリーダーを増幅型リーダーと呼んでいます。

増幅型リーダーとその逆の消耗型リーダーの違いは、以下の通りです。

No 増幅型リーダー 消耗型リーダー
1 組織で働く人たちの知性と能力をフル活用する・限界以上に引き出すリーダー 組織で働く人たちの知性と能力を損なうリーダー
2 情報の流れはチーム全体で流動的で、何かの決定はメンバーに委譲する 情報の流れはリーダーからメンバーにしか流れず、全ての決定を自分自身で行う
3 自分自身は目立とうとせず、自分が有能かどうかも気にしない 自分を賢く見せようとするあまり、他人を愚かに見せる
4 天才を作り出す その人自身が天才

増幅型リーダーの効果

効果

メンバーを有能に、より仕事ができるようにメンバーを変えていくことです。

具体的には、

  • メンバーの能力を100%引き出し、伸ばす。

  • メンバーが出し惜しみをせず、自分の持てるすべての考え、創造性、アイデアを出し尽くし、仕事に必要とされる以上の努力とエネルギーと能力を自発的に発揮する。

  • より価値のある貢献をしようと工夫と努力をする。

などが挙げられています。

また、消耗型リーダーはメンバーの20%~50%の間で能力を引き出しているとアンケートの結果が出ているとのことです。

人材の有効活用

組織を成長させるための人材の考え方として、

  • 足し算モデル(経営資源を増やすことで成長を実現)

  • かけ算モデル(既存の経営資源を活用して成長を実現)

の2つがあります。

それぞれの論理を信じるリーダーは、次のような前提で行動します。

No 足し算モデル かけ算モデル
1 社員は働きすぎている 組織の人材のほとんどは十分に活用されていない
2 一番優秀な社員は限界にきている 正しいリーダーシップがあれば、すべての能力が活用される
3 したがって、さらに大きな仕事をやり抜くには、もっと頭数が必要 したがって、知性と能力は投資を増やさなくても増幅できる

この論理をうまく表現したものは以下です。

80人の社員が50人分の働きしかできない場合もあれば、500人分の働きをすることもある。

増幅型リーダーは、人材を有効活用することで、足し算の論理から抜け出せない競合他社に対する優位性を高めます。

増幅型リーダーの考え方

それぞれのリーダーの考え方は以下の通りです。

観点 増幅型リーダー 消耗型リーダー
人材管理 育てる 使う
失敗への対応 原因を探る 責める
方向の設定 挑戦させる 命令する
意思決定 相談する 決定する
ものごとの実行 支援する 支配する

増幅型リーダーの習慣

増幅型リーダーの考え方を実践するためには、消耗型リーダーにはない以下5つの習慣があります。

  • 才能のマグネット:才能ある人材を惹きつけ、最高の貢献を引き出す。

  • 解放者:自由でありながら、緊張感のある環境を作る。

  • 挑戦者:メンバーの力を伸ばす機会を与え、自分で方向を設定するように導く。

  • 議論の推進者:緻密な議論を通して健全な判断に導く。

  • 投資家:メンバーにオーナーシップを与え、彼らの成功に投資する。

これらの詳細は、次章以降で順次説明しています。

まとめ

増幅型リーダーは天才を作り、メンバーの知識を引き出し、組織の中に伝染力のある集合知を築きます。

その結果として、増幅型リーダーは消耗型リーダーの2倍の能力を手に入れます。

2.「才能のマグネット」としての技法

概要

才能のマグネットは最高の人材を手に入れます。チームメンバーは十二分に活用され、成長して、次の舞台に飛躍できるとわかり、多くの人材が増幅型リーダーの元に集まってきます。

増幅型リーダーによる引き寄せの好循環

増幅型リーダーの環境は、以下のような好循環が生み出されます。

  1. 一流のメンバーが十分に活用される。

  2. 超一流のメンバーと認識される。

  3. 市場価値が上がり、別のチャンスを与えられる。

  4. 「成長の場」という評判が立ち、一流のメンバーを惹きつける。(1に戻る)

4つの実践

1.どこにでも人材を探す
  • 多様な才能を認識する。

  • 組織の境界を超える。

2.各人の天賦の才を発掘する
  • メンバーの生まれ持った才能を探す。

  • 自分の才能に気づいて、意図的のその能力を発揮してもらうために、才能と特定し、本人に伝える。

3.能力を最大限に活用する
  • 人々にチャンスを与える。

  • スポットライトを当てる。

4.障害を取り除く
  • メンバー全員が自我を捨てて、チームとして働くこと。

  • リーダー自身がメンバーの妨げにならない。

3.「解放者」としての技法

概要

解放者は人々の最高のアイデアと仕事を引き出すような緊張感のある環境を作り出す。その結果、メンバーはもっとも大胆で素晴らしいアイデアを提案し、最善の努力を注ぐようになります。

3つの実践

1.居場所を作る
  • メンバーが貢献できる場所を作る。

  • メンバーを前面に押し出す。

  • 話すよりも聞く。

  • 一貫した行動をとる。

  • チャンスを平等に与える。

2.最高の仕事を求める
  • ベストを尽くしているかを聞き続ける。

  • コントロールできない結果よりも最高の仕事を求める。

3.素早い学びのサイクルを生み出す
  • 失敗を認め、共有する。

  • 失敗から学び続ける。

4.「挑戦者」としての技法

概要

挑戦者は自分の知識を超えて行動できるチャンスを人々に提示する。その結果、組織全体が挑戦を理解し、それを受け入れる集中力とエネルギーを持つようになります。

3つの実践

1.チャンスの種を撒く
  • チャンスの種を撒き、メンバー自身にチャンスを見つけさせる。

  • 組織の根底にある前提に疑問を投げかけ、既存の論理を突破するような問いを発する。

  • 新たな枠組みを示す。

2.挑戦を掲げる
  • 具体的に一つずつ進める。

  • 優れた質問をメンバーに与える。その質問は、ただ考えさせるだけではなく、もう一度自分の考えを省みさせる。

  • 目標に対する行動責任をメンバーに引き渡していく。

3.自信を植え付ける
  • 目標が手に届く範囲にする。

  • 道を示す。

  • 実行する人が計画する。

  • 小さな勝利を重ねる。

5.「議論の推進者」としての技法

概要

議論の推進者は人々を議論に引き入れ、それがよりよい決定につながり、理解と実行が進みます。

3つの実践

1.問題の枠組みを示す
  • 質問を定義する。

  • 「正しいメンバー」でチームを作る。

  • データを求める。

  • 決定の方法を示す。

2.議論を盛り上げる
  • 安全を確保する。

  • 厳しく突きつめる。

3.「開かれた決定」を徹底する
  • 意思決定プロセスを改めて明確にする。

  • 恐れず決定を下す。

  • 決定内容とその理由を知らせる。

6.「投資家」としての技法

概要

投資家は人に投資して責任を与え、リーダーがいなくても自分自身の力で結果が出せるようにします。

3つの実践

1.責任の所在を明らかにする
  • リーダーを任命する。

  • 最終目標への責任を与える。

  • 役割を広げる。

2.人的資源に投資する
  • 教えを導く。

  • サポート役を指名する。

3.最後まで責任を預ける
  • 責任というバトンは、必ずメンバーに渡す。

  • 終わりまでやり遂げる。

  • 目に見えるスコアボードを作る。